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*関連トピック:「ロボダッチ」 「アリイ」 |
70年代のプラモの世界にも、もちろんキャラクター商品はあふれかえっていました。っていうより、プラモ界がガラリと変わってしまった「ガンプラ以降」より、むしろキャラに頼る商品が多かったような気がします。 ガンプラによってキャラ系プラモは「ちゃんと製造しないと売れない」みたいなことになちゃって、クオリティのハードルがドーンと上がってしまい、それまで粗製乱造されていた“いい加減”なキャラ系プラモが絶滅した……という流れだったんじゃないかと思います。 「ガンプラ以前」のキャラ系プラモといえば、60年代にかなりのブームを引き起こした「サンダーバード」のシリーズ、その後は円谷系の怪獣プラモが続々つ くられましたし、70年代に入ってからは「マジンガーZ」などのロボットアニメ系、「ガンプラ」的な細部の細かさを誇った「宇宙戦艦ヤマト」シリーズ、メ カっぽくないキャラでは「ゲゲゲの鬼太郎」やら「猫目小僧」(こういうグロい妖怪プラモは日東が得意でしたね)、さらに「なんでそれをプラモにするの?」 と首をかしげたくなるようなギャグマンガの主人公たち、たとえば「ど根性ガエル」やら「天才バカボン」やら、要するに、ちょっとでも人気があるキャラはな んでもかんでもプラモになっていたわけです。個人的に妙に印象に残ってるのは、「マカロニほうれん荘」の「きんどうさん」のプラモ。ゼンマイでカタカタ歩 くやつで、わりとデキがよかったような記憶があります。 で、「なんでそれをプラモにするの?」という変化球キャラのプラモの多くを手が けていたのが、現在、「ロボダッチ」の復刻を行っているアオシマ、青島文化教材。昭和のプラモメーカーのなかでも、「なんでもかんでもプラモにしちゃう」 というイメージが一番強いメーカーで、今も語り草になる「ラジカセ」のプラモとか、果てはクラリオン製のカラオケ機械までプラモ化していまいた。「お前も プラモデルにしてやろうか?」という迫力に満ちた素晴らしい会社だったわけです。 で、手あたり次第に版権プラモをつくっていたわけです から、当然、版権代がどんどん膨らんでいたのだと思います。社内で「版権に頼るのはやめよう! オリジナルのヒット商品を出そう!」という気風が盛り上が り、1975年、アオシマ・オリジナルのロボットプラモシリーズが登場しました。それが、ここで紹介する「アトランジャー」。 それまでも、マル イの「メカボーグ」とか、プラモメーカーオリジナルのロボットシリーズは無数にありましたが、なんかやっぱり「あまりにもあまりにも……」なデキで、どち らかと言えば子どもたちから黙殺されてきました(僕はなぜかそっち系ばかりに注目していたんですが)。しかし、「アトランジャー」には、アニメのロボット に負けないように「ちゃんとやろう!」という熱い“意地”が注ぎ込まれ、背景のストーリーとか設定とかを(一応は)細かく定めて、デザインも各種ロボット アニメを参考に決定されたようで、ある意味、青島の“本気”がブチ込まれた商品になったわけです。 その結果、この挑戦的な新商品は当時 の子どもたちを魅了し……たとは思えません。少なくとも僕の周囲では、箱をちらっと横目で見て「なにあれ?」という反応が主流でした。僕も当時は購入して いませんし、それどころか、「アトランジャー」の存在はほとんど記憶から抜けていました。「マジンガーZ」すらちゃんと見たことのないプラモ工場のおじさ んが、雑誌かなんかでいろんなロボットを眺めながら、「これとこれとこれをこう混ぜちゃうおう。ほら、強そうだろ?」「ええ、主任、強そうです」みたいな プロセスで決定された感じのデザインは、正直、キツかったです。 が! あらためて調べてみると、「アトランジャー」はこの種の商品とし ては異例のヒットを記録し、「ゴダイガー」などの姉妹品まで発売しながら、「ガンプラ以降」も販売は継続されていたそうです。つまり、僕ら世代よりちょっ と下の世代たちのなかには「お! カッコいい」と思った子も多かったようです……ちょっと信じられないけど。 しかし、やっぱりアオシマってエライ。版権商売に反旗を翻し(っていうか、まぁ、コスト削減しようしただけだけど)、自社キャラを開発しようと考えたのがエライし、しかも史上最大の強敵である「ガンダム」の足元でちゃんと細々と生き延びたのがエライ。 これは冗談でも皮肉でもなく、「工場のおっさんが考えた変なキャラ」が無数につくられ、そいつらが元気だったからこそ、昭和のオモチャっておもしろかったんだと思います。 (2011.6.5) ●青島については、この本でお勉強しましょう……
| がんばってるのはわかる!という微妙なデザインです。 この「発展型アトランジャー」はガンプラブーム最盛期に発売されたタイプ 細かいんだか大ざっぱなんだかわからぬ背景設定。 ひとつ言えるのは、とにかく文書が変! つくってみました!意外にプロポーションがいいんです。 パーツもけっこうちゃんとしてます! 付属の武器を持たせてみましたけど…… このモッサリ感がなんともパチ・フィーリング! 付属のセメダイン。これが涙腺ゆるむほど懐かしい……。 中身はすでにカッチカチ |
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