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ロッテ「コーヒー ガム」
「渋い名脇役的存在」

*関連トピック:復刻版「クイッククエンチ」 復刻版「イヴ」




 先ごろ、ロッテでは復刻してほしいガムランキングというア ンケートを実施、上位3つの商品を復刻・販売するというステキな企画を行いました。3位までにランキングされたのは「コーヒーガム」、「クイッククエンチ」、 そして僕ら世代には今ひとつピンとこない「スウィーティー」だったわけですが、この3つが2011年2月22日に予定通り発売されまして、ここではひとま ず、60〜70年代のちびっ子たちにとっては「ちょっとオトナの味」でおなじみだった「コーヒーガム」の復刻版を紹介したいと思います。

 僕的にはこの商品、子ども時代を通じてずーっと定番の商品 だったので、2年前に書籍の取材でパッケージ資料を拝 見したときも、「懐かしい!」という印象はあまり受けなかったんです。パッケージの細部まで記憶に残っているので、「ああ、あった、あった!」とはなら ず、「これ、なくなってたのかぁ……」という感じなんですよね。まぁ、もちろん、そういう商品の復刻は本当にウレシイんですけども。

 当時の子どもにとってロッテのガムといえば、主役はやっぱ りマンガのキャラとコラボした転写式シール付きのタイ プ。その他のものは基本的にはオトナ向けで、特に「グリーンガム」とか「クールミント」とか「スペアミント」(これ、なくなっちゃいましたね。白いパッ ケージにライオンのマークのヤツ)なんかだと「辛い、辛い、辛い!」ってなっちゃって食べられない。かろうじて食べられるのが、「梅ガム」(これ好きだっ た!今も健在)、「ジューシー&フレッシュ」(これも終売。黄色いパッケージにフルーツ盛り合わせのイラスト)、そして「コーヒー」の非ミント系のガム だったわけです。

 非ミント系ガムのなかでも「コーヒー」は古株で、発売は 1962年。僕ら世代はものごころがついたころから口にしていましたが、「うぅ、苦いな」なんて言いながら、でもその苦さにオトナっぽさを感じていたのを 覚えています。

 というわけで、復刻版をさっそく試食してみました。パッ ケージ同様、味も完全に記憶しちゃっているので、 「あ!」というような懐かしさはないかなと思っていたんですが、包みを開くときの香りが、まず「あ!」でした。これ、まったく忘れてましたね。「コーヒー ガム」って、なんか特有の匂いがあったんです。コーヒーの匂いじゃなくて、ちょっと形容しがたい「コーヒーガム」ならではの匂い。これ、懐かしい(笑)。
 で、食べてみると……ん? なんか、ちょっとオリジナルとは違うかなぁ、という感じ。まず、食感がソフトで(昔の板ガムって、一様に今より硬かったと思 う)、やけにミルキー。ミルク感というか、クリーム感があります。昔はもう少しブコツな味だったと思うなぁ……。子どもだったからかなぁ? ただ、ちょっ と噛んでると、すぐにスッと味が消えてちゃう「長持ちしなさ」は昔どおり。ガムの味って、このくらいアッサリ消えちゃう方がいいような気がします。

 それにしても、「コーヒーガム」に限らず、「コーヒー 味」ってのがそもそも僕らには懐かしい。60年代から70 年代なかばにかけて、コーヒーには今よりずっと高級なイメージがあって、実際、原料としてのコーヒーは非常に割高だったんです。「ライオネスコーヒーキャ ンディー」を取材したとき、とにかく当初はコストとの格闘で、結果的にすごくバカ高いキャンディーになっちゃったという話を聞きましたが(当時は贈答用に も使われていました)、コーヒーが一種のステイタスだったこの時代は、「疑似コーヒー」っていうか、「バーチャルコーヒー」みたいな形で、「コーヒー味の お菓子」が各社から続々と発売されました。お菓子のフレーバーの一種としては定番で、甘いお菓子に3つくらいのフレーバーがある場合、たいていコーヒー味 が含まれていたもんです。なので、僕ら世代には、本物のコーヒーとはちょっと違う「コーヒー味のお菓子」の「コーヒー味」がすごく懐かしかったりするわけ です。
(2011.3.6)


パッ ケージ。ほぼ昔どおりですが、側面のデザインが現行の「クールミント」のスタイルを踏襲(ペンギンが並んでる代わりにコーヒー豆が並んでる)


し かし、やっぱり今見ても渋い色合いだなぁ(笑)。「オトナのガムだ」って思いながら食べてたころを思い出します


中 身。こんなに薄い色だったかな、という気もしますが……




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