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「スクリーン」と「ロードショー」
「映画雑誌」

1979年2月号の『スクリーン』表4広告。Mr.BOO!
*関連トピック:映画のチラシ収集ブーム




 ソフビ怪獣とか、ミクロマンとか、サイボーグ1号 とかにウツツを抜かしていた70年代小学校低学年男子も、4年生くらいになるともうちょっと色気のあるものというか、小生意気な感じのものというか、いわ ゆる「青春系」のアイテムに関心を示しはじめます(女子の場合は数年早くそっちに行っちゃうんですが)。つまり、洋楽とか、アイドルとか、ファッションと か。

 映画もそういうもののひとつで、たとえば東映マンガ祭り的なアニメ&特撮映画しか見たことのなかったガキが、突 如、「テイタム・オニールがかわいい」とか、「(グリースの)オリビア・ニュートンジョンがおばさんくさい」とか、「ファラ・フォーセットは演技がヘタ」 みたいなことを言いだすわけです。

 僕ら世代にとっての当時のアイドル女優たちといえば、70年代なかごろではジャクリーン・ビセットやファラ・フォーセット、リンゼイ・ワグナー(テレビドラマ『バイオニック・ジェミー』ね)など。
 ハリウッド女優のアイドル化が加速した70年代後半から80年代にかけては、先述のテイタム・オニール、『リトル・ダーリング』でテイタムとコンビを組 んだクリスティ・マクニコル、正統派美人女優のわりに『青い珊瑚礁』的な微エロ映画ばかりに出てたブルック・シールズ、ファニーフェイスのフィービー・ ケーツ、『フラッシュ・ダンス』で一発屋と目されつつ、後になんとサミュエル・フラーの映画に出ちゃったジェニファー・ビールズ、さらに僕が一番好きだっ たナスターシャ・キンスキー(『テス』『キャットピープル』『ワン・フロム・ザ・ハート』)などなどでした。
 そういえば、こういう映画ブームってあくまでも男子限定の流行でしたよね。女の子たちがいっせいに外国人俳優を話題にする、なんて時期はなかったような気がするな。

 とにかく、僕らはアイドル女優の切り抜きを「透明下敷き」にはさんで、授業中に嬉々として使ったりしていたわけ です。で、その切り抜きの出所は、もちろん『スクリーン』『ロードショー』という2大月刊映画雑誌(お小遣いに余裕ができて、年齢的にも気軽に一人で映画 を見にいける中学生になると、映画情報はもっぱら超実用的な『ぴあ』から仕入れることになるのですが)。
 『ロードショー』は残念ながら休刊になってしまいましたが、『スクリーン』は現在も刊行されています。ただ、やはり僕らが子ども時代に親しんだ70年代のテイストはだいぶ失われている模様。まぁ。だからこそ今も続刊できているんだと思いますけど。

 当時の『スクリーン』『ロードショー』をあらためて見てみると、これを果して映画雑誌と呼んでいいのか? とい う部分も多々あって、映画に関する情報や批評よりも、とにかく「映画スター」(主に女優)の写真をたくさん見せる、という部分に力点を置いた「アイドル 誌」なんですよね。ただグラビアを並べるだけだと写真集になっちゃうんで、写真を並べる口実というか、「ただ並べてるわけじゃないですよ。こういう趣旨が あるんですよ」という言い訳&コジツケ的なテーマが毎回の特集になっていました。
 たとえば「スターのお宅拝見!」とか、「魅力対決! ブルック・シールズVSフィービー・ケーツ」とか、「旬の映画女優、ファッションチェック!」と か、要するに毎回、女優ネタのゆるい「駄話」を設定して、とにかく人気の女優の顔をガンガン見せていく、みたいな内容だったわけです。
 そういえば、当時の『スクリーン』『ロードショー』の表紙を男性の俳優が飾ることは皆無で(現在の『スクリーン』の表紙はむしろ男性ばっかりですが)、 当時の映画雑誌はあくまでも男子向けに編集されていたフシがありますね。このあたりが、女の子のハリウッドスター好きが少なかった要因なのかも知れませ ん。

 ともあれ、こういう「なんでもいいから人気のあのコの顔と名前を出しとけ」的な編集は、当時のアイドル雑誌の王 道で、というか、昔も今も雑誌っていうメディアは多かれ少なかれそういうものなんですが、それにしても牧歌的というか、「これで通用したのか!」という時 代のユルさに驚かされてしまいます。

(2010.11.30)




1983年8月号の『ロードショー』。表紙はちょっと大人っぽくなったテイタム・オニール


付録のポートレート。007のロジャー・ムーアと『キングコング』のジェシカ・ラング


当時は「これがないと雑誌が売れない!」という感じだったフィービー・ケーツのグラビア


スターのファッションに見る「今年の流行」。結果、「Tシャツが流行る模様」という非常に曖昧な結論に達しています




1979年2月号の『スクリーン』。表紙はテイタム・オニール


付録はオリジナル・カセットレーベル!


スターのお宅は意見企画。ジャクリーン・ビセットさんも拝見されちゃってます


定番無意味企画「スターの似顔絵の描き方」!


毎号、必ず掲載されていたテレビの映画枠を網羅した番組表



1984年12月号の『ロードショー』。表紙は人気絶頂期のフィービー・ケーツ


ダ、ダリル・ハンナ! もちろん『KillBill』ところか『ブレードランナー』以前、『スプラッシュ』で人魚の役をやったころ


ブルック・シールズが「最近太った」という大きなお世話的報告



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