初見健一のweb site * 東京レトロスペクティブ



学研の「科学」と「学習」

「“科学の時代”の終焉」




 2009年12月3日、学研は60年近く続いてき た児童雑誌「科学」(1946年創刊)と「学習」(1957年創刊)の「廃刊」(ま、慣例的に「休刊」って言ってますけど)を発表しました。同社のリリー スによれば、理由は「少子化」「価値観の多様化」。キッズカルチャーにかかわるモノが消滅する際の呪文みたいな2つのコトバですが、しかし学研の場合、本 当によくガンバったと思います。ここまで続いてきたのは、むしろ「意地」のみのなせるワザだったような気がする。

 創刊当初、「科学」「学習」は学校内で先生の手によって販売されていたそうです。「学校内で教師が商売していい のか?」ってことがちょっと問題になって、次に学校の近隣の「路上」などで売られるようになったらしい。これも問題となって、最終的に「学研のおばちゃ ん」による訪問販売員制度が導入されました。僕の小学生時代は、すでにこのシステムが確立されてました。
 でも、校門前などで待ち伏せしていたオジサンが(雑誌そのものを販売したりはしなかったけど)、下校時の子どもたちに「お母さんにお願いしてね〜」なんつってパンフと注文票を配布していた記憶はあるな。

 我が家では、小3くらいからかな、「科学」と「学習」の両方をとるようになりました。親にはもちろん「勉強のため」ということにしてましたが、こちらの感覚としては、「豪華なオモチャが付録についた雑誌」という感じ。
 なにしろ、当時の児童雑誌の付録なんて、ボール紙と割りピンの工作が主流ですからね。豆電球やモーターがつくプラモなみのクオリティのおもちゃ(じゃないけど)が毎月届く、なんて夢みたいだった。


 楽しみにしていたのはもちろん「科学」の方。モーターでギイギイと歩くメカニックなカブトムシ、精巧な骨格標本、指紋がとれちゃう探偵グッズ、恐竜の骨格を再現できるプラモデル、手づくりラジオ、手づくりカメラ……。
 今月号で来月の予告写真を見ると、もう待ちきれなくてウズウズしちゃうほど魅力的なモノのオンパレードでした。

 「学習」の付録の方は不思議なほど覚えてない。学習用カードみたいな紙モノが多くて、ちょっとテンション下がる んですよね。プラ製のものも、「熟語記憶マシーン」みたいな感じで、かなり地味な印象だった。それでも「お、今月はスゴイ!」っていう付録もあったと思う んだけど、まったく思い出せない……。

 イヤだったのは、配達日がきちんと決まってなかったこと。学研のおばちゃんが「だいたい25日」みたいなユルイ 感じでやって来る。学校で授業を受けながら、「今日は25日! きっともう学研が届いてるゾ!」なんて楽しみにして家に帰ると、母親に「まだ来てないわ よ」なんて言われてガッカリ……ってことが多かったなぁ。

 雑誌の内容も、少なくとも「科学」はそこそこおもしろかった。小学館の科学読み物みたいなトラウマ記事はもちろんひとつもなかったけど(なにしろPTA全国協議会推薦なので)、その教科書的な縛りのなかでちゃんと「未来」を感じさせる記事が多かったと思います。

 やたらとはっきり記憶しているのが、「科学」とも「未来」ともあんまり関係のない「カレーの研究」。
 「カレーのスパイスは漢方薬のようなもので、胃腸薬に近い」という解説のそばに太った男の子のイラストが描いてあって、その子がフキダシで「そういえ ば、カレーだとふだんよりいっぱい食べられるような気がする。スパイスの成分で胃腸が活発になるからか!」とか言ってるの。
 子ども時代、僕はカレーが苦手だったので、「カレーだといっぱい食べられる」というセリフが妙にひっかかった記憶がある。

 あと、やっぱり連載マンガね。これは1年ごとに連載作品が変わっちゃうので懐かしさを共有するのはなかなか難し んですが、僕の年代だと「科学」は石ノ森章太郎が看板作家でした。『チクタク大冒険』っていう作品が印象的だなぁ。「学習」では山口太一って人の『名探偵 荒馬宗助』。新聞の4コマみたいな古いスタイルの絵で、子ども的には「?」だった。主人公がカツ丼好きなの。

 小学館の学習雑誌までが消えちゃう現代、「科学」「学習」が撤退に追いやられるのはしかたのないこと、と思いつ つも、少なくとも「科学」の方は誰かが何かすれば救えたのかもなぁ……という気がしなくもない。純粋な学習雑誌としてではなく、ある種のエンターテインメ ント誌として。昨今の「大人の科学」ってコンセプトは個人的にはけっこうハズしているように見えるんですが、もうちょっと違う形でやっとけば、プチ学研 ブームはちゃんと来たんじゃないのかなぁ? なんてことを僕が考えてもしかたがないけど。

(2010.2.27)

1976年2月号の「4年の科学」表紙。この号の付録は「せん水ロボット実験セット」でした。それに関連して、特集は「物のうきしずみ」。表紙のイラストは山口太一氏




次号の付録予告のページ。ここを見るのが一番の楽しみだった。ちゃんと毎回、「来月の付録は今月よりもスゴイぞ!」と思わせてくれたのが、今考えるとスゴイかも。「学習」の付録は石膏でつくる立体地図。あったなぁ、こういうキット




学研 大人の科学マガジン 17 テルミン

学研 大人の科学マガジン 17 テルミン
価格:2,300円(税込、送料別)



初見健一のweb site * 東京レトロスペクティブ



アクセス解析

inserted by FC2 system