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僕の小学生時代はベッタベタの少女マンガ全盛期でした。 特にすごかったのが『キャンディ・キャンディ』(いがらしゆみこ作・1975年)の人気。 当時の少女マンガって男の子には近づきがたかった、っていうか、当時って、男の子が少女マンガを読むなんてことは許されない、みたいな風潮がありましたよね。結局、僕は『キャンディ・キャンディ』を読んでいません。 小学生時代の僕が唯一ハマることができた少女マンガは(楳図かずおを除外すれば)、『はいからさんが通る』(大和和紀作・1975年)。土曜日の夜にやっていたアニメを先に見て、かなりスラップスティックなギャグマンガだったので男の子にも入りやすかったんです。 マツカワさんがまた強烈な「はいからさん」フリークで、「一番の好物はつくね!」(つくねは「はいからさん」の主人公「紅緒」の大好物)と言い放ち、お弁当持参のときは本当に毎回つくねを持ってきていたんです。キャラが憑依していたんですね。 僕はマツカワさんを以前から密かに崇拝していました。 スーパーカーブームまっただなかの頃のある日のこと、友達との下校時、アルファロメロが走ってきたのでみんなで大騒ぎしていると、その車窓からひょっこりマツカワさんが顔を出し、「おーい、ケンタ!」と手を振ったのでビックリしたことを覚えています。 こういう「生粋のヒロイン」みたいな人が現実にいるんだなぁ、とすっかり「マツカワ教」信者になっていた僕は、彼女が「おもしろい!」と言う『はいからさんが通る』は絶対に「おもしろい!」はずだ、と思うようになったわけです。 ほぼ30年ぶりに『はいからさんが通る』を読みなおしてみたんですが、メチャメチャなストーリー展開と投げやりで暴力的なギャグの印象は子供のころと変わっていませんが、ある種の暗さと、ちょっとした社会性というか、女性の権利をめぐる「闘争」……といっては大げさですが、そのあたりのことがわりとちゃんと描かれていたんだな、というところが気になりました。少女マンガは少年マンガより常に「高度」だ、ということはよく言われますが、確かにこういう部分、当時の僕にはまったく読み取れませんでした。僕はただ、「紅緒」のメチャメチャぶりをおもしろがってただけだった。 当時10歳だったマツカワミカさんが、『はいからさんが通る』のどこにあんなに惹かれていたのか、あらためて聞いてみたい気がします。 小学校卒業後、彼女は私立の中学に進んで、僕は区立に行ったので、ほとんど会わなくなりました。それでも何度か、なぜか決まって夜、僕が我が家で飼っていた犬の散歩をしているときに、バッタリ出くわすことがありました。暗がりで顔がよく見えず、訝しげな顔で近づいてきて、「あれ? ケンタ?」なんて声を掛けてきたことをやたらとハッキリ覚えています。 アニメ版『はいからさんが通る』のエンディングのテーマが大好きです。あれを聴くと、今でもあのころの土曜日の夕方にもどってしまいます。 ♪ご機嫌いかが、紅緒です ご機嫌いかが、マツカワミカさん。 |
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