初見健一のweb site * 東京レトロスペクティブ



クローバー「ヒューストン」

「悲しき玩具 その2」





 「あまりにもあまりにも」な玩具としてツクダオリジナルの「フィンガーポップ」を紹介しましたが、ある意味でそれ以上に「あまりにも」なのが、ここに紹介する「ヒューストン」です。
 「フィンガーポップ」はウカツにも購入してしまって「ゲッ!」となりましたが、「ヒューストン」の場合は「あまりにも」なのが見え見えなので、買うことすらしませんでした。

 発売年は不明。たぶん70年代なかばくらいじゃないかと思います。メーカーはクローバー。この会社の創業は1973年で、70年代後半以降はいわゆる「超合金」(という呼び名はポピーしか使えないけど)のメーカーになったので(「ガンダム」とかを出していた)、それ以前に販売されていた商品だと思います。

 どういう玩具かっていうと、ただのロープの先にプラスティックのボールがついてる。それで……っていうか、それだけ。マジで。
 どう遊ぶかっていうと、ボールのぶらさがったロープをまっすぐにたらして、先端をヒョイッと持ち上げる。当然、もう一方の先端についたボールはピョンと飛びあがる。で、クルッと上手にロープを操作すると結び目ができる。で、……っていうか、それだけ。マジで。
 結び目ができれば「成功」、できなきゃ「失敗」という、本当にそれだけのおもちゃ。っていうか、これ、おもちゃ? その辺のロープに重りをくくりつければ、それで代用できちゃうんじゃないの?

 メーカーとしては「瞬間空中むすび」なんてキャッチコピーをつけちゃって、ヨーヨーとかケンダマとか、練習してスキルを高める玩具として流行らせようとしたらしい。ま、あたりまえだけど流行りませんでした。周囲でも、持ってた子は皆無。

 東京12チャンネルの夕方限定で、たまぁ〜にCMが流れてたんですよね(当時、12チャンのみでCMを流すメーカーのオモチャって、いろいろな意味で「味わい」があった。ファミコン以前の任天堂も常連でしたね)。
 このCMがまたヒドイもので、子どもが5人くらい並んでダラダラと「ヒューストン」をやっている映像に、次のようなナレーションが流れるんです。セリフの90パーセントは正確に覚えていると思う。こんな感じ。

「今、アメリカで大流行の『ヒューストン』! さあ、結び目をたくさんつくろう! ヒュッ!と持ち上げて、ストン!と落とす。だから『ヒューストン』! わかるネ!(←この「わかるネ!」が妙に印象的だった)

 当時、僕、小学校の低学年だったと思いますが、その年齢のガキから見ても「インチキ!」と叫びたくなるようなCMでした。
 「アメリカで大流行」は絶対にウソだと思うし、だいたい、どんなにヒマで死にそうなときでも、これをおもしろいと思う人間はいないだろう……ってのは一目瞭然。子どもをなめんな。

 ……って当時は思いましたけど、今はむしろ欲しいです(笑)。
 こんなオモチャでも一応は通用した、っていうか、たぶん通用はしなかったんだろうけど、「通用するんじゃない?」という意見が企業の企画会議で通っちゃう昭和のユルさが、やっぱりステキ。昭和の遺産としては、けっこう貴重な一品だと思います。


(2009.12.31)





初見健一のweb site * 東京レトロスペクティブ



アクセス解析

inserted by FC2 system