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ロッテ「マザービスケット ジャフィー」

「史上最高のお菓子…かも」




 なんとかして復活していただきたいというお菓子はいくつかありますが、周囲でこの話題が出たときに僕がまっさきに提示するのは、ロッテ「マザービスケット」シリーズの最高峰であるところの「ジャフィー(JAFFY)」。

 「マザービスケット」ってブランド、ご記憶の方も多いと思います。
 『奥さまは魔女』の「サマンサ」役でおなじみ、エリザベス・モンゴメリーがキャラを務めるCMが80年代を通じて放映されていました。最初、ちょっと老けた「サマンサ」の姿に驚きましたが、あの「ピロピロリン!」と唇の端を動かす魔法を披露してくれたりして、僕ら世代は「懐かし〜!」と大感激しちゃいました。「♪ロッテ、マッザ〜、ビスケットッ!」っていうサウンドロゴも印象的でしたね。

 『奥さまは魔女』の再放送を繰り返し繰り返し見せられてきた僕ら世代にとって、「サマンサ」って存在は「ママ」のイコンであると同時に、ある種、もっとも身近な「アメリカのブロンド美人」の象徴でもあって、なんか、ちょっと複雑な思いを抱かせるんですよね。キレイでかわいいママ、っていうより、キレイでかわいい「のに」ママ。ある意味、キケンな存在だったのかも知れません。
 同じ頃、テレビ版『がんばれベアーズ』のエース「アマンダ」(テイタム・オニールじゃなくてトリシア・キャスト)に、「同世代の子どものクセにめっちゃオトナ!」っていう多大な衝撃を受けましたが、僕などは「サマンサ」と「アマンダ」によって幼少期の「理想の女性像」をトラウマっぽい形で植えつけられたような気がします。

 話それまくり。
 その「マザービスケット」のごく初期のシリーズに、「ジャフィー」というビスケットがあったんです。モサッとした(たぶん)ダイジェスティブ・ビスケットの上に、たっぷりのマーマレードをトッピングし、さらにその上からチョコレートでコーティングする……という構造。
 これ、子どもから見ても「つくるのがむずかしそう!」って感じでした。マーマレードをビスケットでサンドするならともかく、あくまでトッピングなんです、それもけっこう山盛りに。で、薄〜いチョコの膜でコートしてある。表面のチョコを指で押すと、クシャッとヒビが入って中身のマーマレードがはみ出てくる状態。グニャグニャのマーマレードをチョコレートコーティングするってのは、かなり至難の業なんじゃないかなぁ……と思いましたね。しかも、そのチョコの膜には立体的な格子模様の刻印まであるんです。

 で、この前代未聞の複雑な構造が生み出す食感と味わいは、本当に奇跡的!
 CMでも確か「ケーキみたい!」というセリフが出てきたと思いますが、まさに手づくりのタルトみたいなんです。ひと噛みすると、まず極薄のチョコの皮膜がパチリと破れて、ネットリしたマーマレードの甘さと苦味が口のなかにひろがる。チョコとオレンジピールって合うんですよね。で、最後に土台であるビスケットの香ばしさとボリューム感を堪能。うん、こういう文章を書いていると、リアルにあの味わいがよみがえってくる!

 僕も親も「ジャフィー」が大好きで、当時は茶箪笥に常備されていたんですが、いつの間にか販売が終了してしまいまいた。ファンは多かったはずなのに……。
 やっぱり、「つくるのがむずかしい」ってのがネックだったんじゃないかなぁ? 特殊な専用機械が必要になりそうだし、箱を開けるとチョコのコーティングがすでにヒビだらけだった、なんてこことも多かったので、搬送中の破損問題もあったはず。でも、大量生産品の限界を超えるほどの複雑なレシピに挑戦したロッテ、やっぱりエライ! ぜひ復活をお願いしたいところ。

 ちなみに、ソニプラとかで売ってる輸入ビスケットに、同様の構造のものがあるようです。僕はまだ試してないけど、あの味が再現されてるなら、ぜひ入手したいっ!


(2010.1.13)




当時のCM。『奥さまは魔女』から20年ほどを経たエリザベス・モンゴメリー

CMでは構造を動画で説明してました。マーマレードをトロリ、さらにチョコをトロリ

できあがりはこんな感じ。実際の商品はもうちょっとカクカクした感じでしたね

「マザービスケット」シリーズ。「ロリオ」ってのも懐かしいなぁ


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