初見健一のweb site * 東京レトロスペクティブ



「キリンレモン」の古い缶
「奇蹟のゴミ」




 去年、友人と二人で神奈川県三浦半島三崎口、マリンパーク付近の遊歩道を歩いていました。ふと林の中に目をやって、「あ!」と声をあげてしまいました。

 「キリンレモン」の昔の缶が落ちてる! 長らく目にしていなかった往年のデザインが急に目に飛び込んできたので、キリキリと脳が回転して、記憶が幼少時に巻き戻されるような感覚を覚えます。


 僕にとって、「キリンレモン」といえばこの缶、もしくはリターナブルのガラスビン(ガラスビンは現在もほぼ昔のままの形で販売中。売っているお店は少ないけど)。
 どうもペットボトルの「キリンレモン」は、「キリンレモン」らしくないんですよね。ただの「知らない飲みもの」です。「中身は同じ」と言われても、「中身なんて関係ない」。子供にとってあの種の炭酸飲料は「イメージで飲むもの」だと思います。「入れもの」が変わってしまえばもはや別物。幼少時に刷り込まれた「キリンレモン」のイメージは、あの缶から切り離すことはできません。

 僕たちは「キリンレモン」を飲みながら、白い地に斜めに走るグリーン、イエロー、ブルーのストライプを喉に流し込んでいたのだと思います。そしてもちろん、あの麒麟の印象的なマークも味わいのうち。それらのビジュアルこそが、「三ツ矢サイダー」や「リボンシトロン」と区別のつかない淡泊な炭酸水を、「キリンレモン」という固有の商品にしていたのだと思います。

 このデザインの「キリンレモン」缶が登場したのは1973年。いつまで販売されていたのかはわからないけど、80年代の後半にはもう目にしなくなっていたと思います。だとしたらこのゴミ、30年近くも林の中で人知れず眠っていたことになる!


(2009.2.8)




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