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ホームラントーイ「カエルのコロちゃん」
「ないよりマシ」




 いわゆる「ぴょんぴょんガエル」などと呼ばれる玩具。
 僕たち世代なら誰もが一度は遊んでいる定番おもちゃだと思います。
 昔ながらの「定番おもちゃ」というのは不思議なもので、すごく人気のあるもの、おもしろいものが定番として時代を超えて残っていく、というわけでは必ずしもないんですね。

 この種の「ぴょんぴょんガエル」が「すっごく好きだった」という子は少ないと思います。「もっのすごく熱中して遊んだ」という記憶を持っている人も少ないでしょう。

 なんとなく駄菓子屋で買って、15分くらい遊んで、すぐに飽きてほったらかし、いつのまにか失くなって、忘れたころにまた買う……みたいなことを繰り返した人がほとんどなのではないでしょうか?

 要するに、「ないよりマシ」的なおもちゃだったんですよね。
 が、こういうものが時代を超えて、細々とですが今も残っている。複数のメーカーが製造しており、安価な駄玩具として、お子様ランチの景品などとして現存している。不思議といえば不思議。

 同じことが「吹き上げパイプ」(パイプに息を吹き込んでピンポン玉を浮かせるオモチャ)、「カチカチ」(指で押すとカチッ!と音をたてるだけのブリキのおもちゃ)、ビニール製の「チャンバラセット」などにも言えます。

 「ないよりマシ」という微妙なおもしろさ、というかつまらなさみたいなところに、長寿の秘密があるのかも知れません。なんとなくメーカーが惰性で作りつづけ、なんとなく店が惰性で売りつづけ、なんとなく買う方も惰性で買ってしまう……みたいな「惰性スパイラル」。
 「ないよりマシ」には、少なくともブームが去ったり人気が落ちたりする心配はありませんし。

 右の写真はホームラントーイ製の「コロちゃん」。この種の玩具では昔から「正統」として知られる商品です。箱に記された「よくとび、スイスイ泳ぐ」というキャッチコピーが素朴でカワイイ。
 たぶんですが、これは模造品が乱発されてから掲載されるようになったコピーだと思います。実際、当時は他社製の「とばない、泳がない」カエルが多数出まわっていました。
 数回ポンプをプシュプシュしただけで、ゴム製の足のどこかが避け、空気漏れが発生して動かなくなる不良品も多かった。

 あらためてこの箱を観察し、「スイスイ泳ぐ」というコピーに気づくまで、この「コロちゃん」がお風呂遊びで使う玩具の定番でもあったことを忘れていました。
 そう、「コロちゃん」は文字どおり「水陸両用」で、部屋で跳ばして遊ぶだけでなく、お風呂に入れて泳がすこともできたのです。

 考えてみればよくできたオモチャですよね。有線コントローラで制御する仕組みは、一種の「手動リモコン玩具」。水陸両用のリモコン玩具が100円程度で買えるわけだから、「ないよりマシ」などと言っては失礼かも知れません。

 残念ながら、ホームラントーイは「コロちゃん」製造を数年前にやめてしまいました。デッドストックは今も多少流通しているようですが。

 ホームラントーイといえば、看板商品は誰でも知っている「チエンリング」。
 女の子がネックレスにしたり、男の子が自転車のスポークに取り付けたりする小さなプラスチックの「輪っか」。あれもまた「ないよりマシ」を堂々と体現する傑作ロングセラー玩具の代表です。

 「ないよりマシ」。かつての駄菓子屋は、そんなモノばかりで埋めつくされていました。たぶん、だから楽しかったのだと思います。
 商品に「意味」がありすぎる時代、「意味」のある商品しかつくられないような時代を「不景気」というのかも知れません。

(2009.1.28)




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