初見健一のweb site * 東京レトロスペクティブ



BOOK

月刊『コロコロコミック』

 「70パーセントが『ドラえもん』」



koro1




 スチャダラパーは「コロコロなるまま」で「イェーッ! コロコロ大好 きーっ!」と高らかに宣言していますが、僕ら世代(僕はアニと同年齢)って、かなりギリギリで「コロコロ」に間に合った、という感じなんですよね。本来の 「コロコロ世代」、本当にアツイ感じで「コロコロ」を読んだ世代は、少なくとも3つ4つ下の人たちから、という気がします。

 「月刊コロコロコミック」の創刊は1977年。僕が熱心に読んだのは、この創刊の年と次の年あたりまでだったと思います。
  創刊当初(当時は3か月に1度の刊行)、僕らにとっての「コロコロ」は、いろんな連載作品が読める「いわゆるマンガ誌」ではありませんでした。完全に「別 冊ドラえもん」。「てんとう虫コミックス」に収録されていない未読の「ドラえもん」がブ厚いページ数でたっぷり読める雑誌、というイメージだったんです。 もちろん藤子作品以外のマンガも掲載されていましたが、ほとんど「ついで」という感じ。売り方自体も最初から「新たなマンガ誌創刊!」という方向ではな く、あくまで「『ドラえもん』100ページ一挙掲載!」みたいなアピールをしていて、表紙にも毎回ドカンと「ドラえもん」が載っていました。

  当時は、なんで「コロコロ」に未読の「ドラえもんが」がドカッと掲載されるのか、そのへんのカラクリはまったくわからなかったし、別に不思議とも思わな かったんですけど、もともと「コロコロ」は、小学館の各学年の学年誌に掲載されたものの、単行本には収録されなかった「ドラえもん」作品を、ただボツにし ちゃうのはもったいない、なんとか二次利用できないか、というテーマで創刊されたのだそうです。完全に「ドラえもん」ボツ作の「受け皿」だったわけです ね。藤子F不二雄先生も協力的で、全作品の掲載権を編集部に譲渡したそうです。

 「ドラえもん」ボツ作品については、専門サイトなどでい ろいろ研究されていますが、単に低学年誌に掲載されてあまりにページ数が短い作品とか、オチがいまいちだったりして作者がデキに満足できなかった作品のほ か、やっぱりさまざまな側面で「ヤバイ」と判断された作品が多数あったようで、確かに「コロコロ」掲載の「ドラえもん」は、いつもよりグロかったり、ブ ラックだったり、暴走気味な作品が多かった記憶があります。
 でも、作品の質は本当に安定していて、ボツとはいえ、やっぱりおもしろかった。って いうか、「てんとう虫」収録作よりもハジケた秀作が多数ありました。このクオリティの水準維持っていうか、絵もストリー構成もぜったいに一定以下にはなら ない藤子先生の力量、今更ながら本当にすごいですよね。

 80年代以降、「コロコロ」はタイアップ作品を増やしまくり、ファミコン、ビッ クリマン、ミニ四駆、ビーダマン、ハイパーヨーヨーなどなど、良くも悪くも子ども文化の情報発信基地としてガンガン売り上げを伸ばしていくわけですが、そ のころはすでに僕も読者を卒業しちゃっていましたので、「商魂たくましいなぁ」って感じで冷めた目で見ていました。この動きに乗った世代にとっては、この ころの「コロコロ」周辺は、たぶん本当に楽しかったと思います。

 なので、「ドラえもん」以外の「コロコロ」掲載作品にはほとんど思い入 れを持っていないんですけど、唯一、軽微なトラウマとして記憶されているのが「おじゃまユーレイくん」。永井豪のアシスタントだったよしかわ進の作品で、 これはもう端的にエロかったんですよねぇ……。画風とか世界観は、永井豪というよりは、どちらかといえば藤子F的なキュートでクリーンな感じなんです。つ まり、エロ路線に絶対に行かないようなタッチでありながら、内容的には永井路線に行っちゃうってのが、なんか衝撃でした。毎回、見ちゃいけないものを見た ような気分になってたなぁ。

(2011.5.2)


koro2
1979年9月号の「月刊コロコロコミック」
ドラえもん、パーマン、オバQを一挙収録


koro2
トラウマエロマンガ「おじゃまユーレイくん」


koro4
あ! これを忘れちゃいけない!
すがやみつる大先生の「ゲームセンターあらし」!



初見健一のweb site * 東京レトロスペクティブ



アクセス解析

inserted by FC2 system