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ぴよぴよサンダル

「子供の足音」
piyopiyo




 子ども時代は、家でなにかをしているときに、遠く の方から「きゅう、きゅう、きゅう」という音が聞こえてくることがよくありました。「きゅう、きゅう、きゅう」のリズムは速くなったり、遅くなったりしな がら、だんだん大きくなって、そのうちに小さな子供とお母さんの会話が聞こえてきます。

 あの「きゅう」はなんの音だろう? なんてことは考えませ んでした。考えるまでもなく、あれは「ぴよぴよサンダ ル」を履いた子供の足音。そんなことは誰でも知っていました。それほど「ぴよぴよサンダル」はポピュラーだったんです。僕ら世代の誰もが一度は履いたは ず、と言っても過言ではないと思います。もちろん、僕も履きました。あれを履いて、母親の手にひかれて、そこら中を「きゅう、きゅう、きゅう」と歩きま わったわけです。

 商店街の靴屋さんの店先のワゴンには、かならず「ぴよぴよ サンダル」コーナーがありました。店の奥ではなく、たいてい入口の外。通りがけにサッと買えるような、お手軽かつ安価な「客引き商品」として定番だったん でしょう。

 アニメ『サザエさん』のなかでは、「タラちゃん」「イクラ ちゃん」の足音は「♪ピロリロリン」みたいな非現実的 な効果音で表現されます。「カツオ」や「ワカメ」の足音はちゃんとリアルなSEなのに、小さな子供である「タラちゃん」と「イクラちゃん」のみ、「♪ピロ リロリン」。
 確証はないけど、あれって「ぴよぴよサンダル」の影響なのかなぁ、とずっと前から気になっています。あの効果音がセレクトされた当時は「ぴよぴよサンダ ル」の全盛期で、小さな子供の足音がみんな「ぴよぴよ」してたんじゃないでしょうか? で、なんとなく、サンダルを履いていない幼児の足音が「♪ピロリロ リン」でも、さしたる違和感を感じなかったのでは?

 今、街中で「きゅう、きゅう、きゅう」を聞くことはまずな い。
 ある時期、あれを「うるさい」と感じる人が増えたらしい。「マナー違反」「親の見識を疑う」みたいな声が新聞やらテレビやらに寄せられて小さな話題にな り、子供に履かせる人が少なくなり、したがって生産量も落ち、もちろん販売する店も激減しました。

 なんともユーモラスでかわいらしい子供たちの足音が街から 消えたのも、「タラちゃん」と「イクラちゃん」の「♪ピロリロリン」が「不自然」に聞こえてしまうのも、「イライラしてる人」が増えたからだと思います。

(2009.2.12)

今 も健在! がんばれピヨピヨ!





地方の靴屋さん には今もかろうじてピヨピヨ売り場があります

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1979年のお子さまマンガサンダルの広告


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