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コミック版「ロボダッチ」
「読むプラモデル」


*関連トピック:プラモデル「ロボダッチ」




 1975年に発売されて大ヒットしたプラモデル「ロボダッチ」シリーズについてはこちらで解説しましたが、ここではその派生商品、プラモの世界観を物語化したコミックについて紹介したいと思います。

  といっても、僕はリアルタイムではほとんど読んでいないんです。どうやらコミック版「ロボダッチ」には3種類ほどあるらしくて、ひとつは1975年に「た のしい幼稚園」で連載が開始された「ロボダッチ・タマゴロー」、そして、同じく70年代に「おともだち」に連載された「ロボダッチ」。どちらも「ロボダッ チ」のキャラをデザインした小澤さとる氏名義の作品だったようです。この2作品に関して僕はまったく未読ですが、ウワサによれば「ロボダッチ・タマゴ ロー」のデキがとてもイイらしい。シリーズ初期のプラモには「ポケットマンガ」というミニミニマンガが封入されていましたが(覚えてるかなぁ? タマゴ ローのセリフが「○○だっち!」という「だっち語」になってるヤツ)、あの雰囲気に近い作品だったようです(が、「ポケットマンガ」では小澤さとる氏は 「原案」を担当していて、作画は別の人でした)。

 ここに紹介するのは、1982年に双葉社の「100てんランドコミックス」から小澤さ とる名義で発売された書き下ろし単行本。ちょっとややこしいのですが、双葉社は当時「100てんランド」という少年漫画誌を刊行していて、その単行本コ ミックスシリーズとして書き下ろしの「ロボダッチ」1巻・2巻が発売され、後に「100てんランド」本誌に連載開始、その連載をまとめた第3巻が出版され て、全3巻で完結したようです。

 ちなみに、この80年代版ロボダッチも、当時の僕はまったく知りませんでした。っていうか、連載誌である「100てんコミック」なんて知らないし、まわりで読んでる子もいなかった。
  それもそのはずで、「100てんコミック」は「コロコロ」「ボンボン」路線を狙って創刊されたものの、売上振るわず3年で撃沈……というありさまだったよ うです。ま、82年といえば僕はすでに中3ですから、とっくに「コロコロ」系のマンガ誌に興味を失っていましたし、さらには「ロボダッチ」にも見向きもし なくなっていたと思います。

 「100てんランドコミック」版「ロボダッチ」は大人になってから古書店で購入しまして、あんなに大好き だった「ロボダッチ」の世界がストーリーマンガ化されているんだから、少なくともつまらないはずはないし、ただタマゴローたちの造形を見ているだけでも懐 かしい気分になれるはず(なにしろ正真正銘の生みの親の先生が描いているわけだし)と思って読み始めたのですが、正直、つ…ま…ら…な…い…。

  「コロコロ」とか「テレビマガジン」のタイアップマンガとか、あるいはテレビ先行作品のコミカライズなんかはたいていそうでしたが、とにかくストーリーも 設定もユッルユルなんですよね。その回その回でコロコロと細かい設定やキャラの特性が変わったり、いろんな都合があったんでしょうが、子どもから見ても 「ちゃんとやれよ!」って思う作品はいっぱいありました。「ロボダッチ」もそういう作品の典型だと思います。

 一応、作品の構造を書いて おきますと、「バンガイ君」という小学生の男の子のところに「タマコン」というコンピューター(?)が届き、この「タマコン」が「バンガイ君」に「タマゴ ロー」を呼び出す方法を教えて……う〜ん、なんか、この辺の設定からしてグダグダで、ちゃんとした文章にまとめようがないなぁ……。要するに、基本的には 「がんばれ!!ロボコン」パターン。「バンガイ君」の家に居候として「タマゴロー」がやってきて、お決まりの「日常ギャグ世界」が展開するという構造には なっているんですけど、いまいち世界観がフワフワしていて、とりとめがないんです。「ロボダッチ」の仲間たちがドシドシ出てきて活躍する、ということもな く、なんかユルユル、フワウワ、グダグダし続ける感じ……。

 やっぱり付録の「ポケットマンガ」みたいに、「タマゴロー」「ロボZ」を主 軸に、各種○○ロボが次々に出てきてガシガシとバトルする、みたいなシンプルな構成にしないと、「ロボダッチ」の魅力は炸裂しないような気がします。ま、 30年前の小学生向けマンガに今さら「つまらない」と文句を言ってもしょうがないんですけどね。

 あと、上記のマンガのデキがどうのとい う以前に、80年代以降、肝心のプラモとしての「ロボダッチ」本体がかなり魅力を失ってたんですよね。70年代なかばの発売直後をピークに、70年代後半 からはコンセプト的にいろいろテコ入れしまくり、その都度、いろんな流行(ガンダムブームとか)をめちゃめちゃに取り入れたりしちゃって、小学生の目で見 ても「なんか迷走してんなぁ」という状態になってしまいました。そのころにすでに僕は「ロボダッチ」市場を離脱しちゃってましたので、末路までは見届けて いないんですけど……。

 多種多様なロボットが「わんさかごちゃまん」集まって独自の世界をつくってる、っていう設定は、今もそれなりに 魅力的だと思いますし、こういうのって普遍的に男子のテンションをアゲるはず。プラモの本格的な復刻(大人ねらいの大型キット復刻はもういいです。基地や ら島やらって、当時から「ロボダッチ」の本筋ではなかったし、やっぱりロボを集めてナンボというプラモだったんだから)と、「たのしい幼稚園」連載マンガ の復刻、なんとかならないですかね?

(2011.4.30)




robocomic1
1982年 『ロボダッチ』1巻 100てんランドコミックス(双葉社)

robocomic2
1982年 『ロボダッチ』2巻 100てんランドコミックス(双葉社)

robocomic3
中身はこんな感じ…。
なぜかタマゴローをはじめ、キャラは敬語でおしゃべりします




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