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森永製菓「スピン」

「“いちご味”は実在したか?」
*関連トピック:スピン その2




 1960年代後半に生まれた僕たちは、いわば「スナック第一世代」です。
 従来、「おやつ=基本は甘いもの」だったのですが、60年代後半から米国の食文化を模倣する形で各社が続々とスナックを発売し、僕らがものごころついたときにはおやつといえばスナック菓子でした。

 国産スナックのパイオニアといえば明治製菓の「カール」(1968年)。
 いや、カルビーの「かっぱえびせん」(1955年)こそが元祖だ、という人がいたり、いやいや「かっぱえびせん」はスナックじゃなくてアラレだ、という 人がいたりしますけど、ともかく僕らの幼少期、「アメリカンスナック」という触れ込みで登場した「カール」はすでに定番中の定番、キング・オブ・スナック の座についていました。

 この「カール」の対抗馬だったのが、森永製菓の「スピン」(1969年)!
 現在は消滅(といっても、コンビニとのタイアップ商品として一応生き残っています。っていうか、ときおりゾンビのように蘇ります)していますが、当時は「カール」と並んで二大選択肢のひとつだったんです。
 初期のフレーバーは「カレー」「バター」「チーズ」の3種。ソフトな「カール」の食感とは対照的で、カリカリ感が強めの歯ごたえ。そしてなにより、自動車のハンドルのような不思議な形が魅力でした。個人的にはちょっと薄味の「バター」が好きだったなぁ。

 で、ここで声を大にして主張したいのが、70年代の一時期、というかほんの一瞬だけ、「スピン いちご味」が市 場に出まわったことがあった!ということなんです。今まで、誰に言っても「そんなのあるわけないよ、記憶違いだよ」といわれ続けているので、この話になる と多少物言いがどうしても乱暴になっちまうんだよ、このマザーファッカーのアスホール野郎っ!

 確か祖母といつものスーパーに行ったときのことだったと思います。見たことのないピンク色の箱の「スピン」を発 見して、「うっそー! いちご味?」ってことに心底ビックリしました。甘いスナックという発想は(「キャラメルコーン」はすでに存在していましたが)あま りに奇抜ですし、まして「スピン」といちごフレーバーは水と油のように思えました。

 速攻ゲットして試食してみましたが……むむむむむ。やはり絶大な違和感。二つ三つつまんだだけでギブアップでし た。「スピン=しょっぱいもの」という固定観念を植えつけられてる状態では、イチゴの香りと甘さはとても受け入れられなかったのを覚えています。そういう 人が多かったようで、すぐに市場から消えてしまいました。

 が、後にグリコから「パピー」というハート型のいちご味スナックが発売され(オマケが有名ですけど)、これは僕 の大のお気に入りになりました。最初から「いちご味スナック」として登場しているので、違和感の持ちようもなく、「そういうもの」としてすんなり受け入れ られたわけです。
 このことを考え合わせると、あの「スピン いちご味」は、「パピー」同様、実はおいしかったんじゃないか、固定観念が判断のじゃまをしていただけなん じゃないか、と気になっています。そう、「ケロッグ」の「フルーツポン」もフルーツフレーバーがパフにマッチしてて、ミルクなしでポリポリ食べてもおいし かった。ほの甘いスナックっておいしいんですよね。

 以前、森永製菓に取材したとき、「スピン いちご味」についてお聞きしたことがあったんですけど、詳細は不明でした。どうも地域限定のテスト販売だった可能性が高いようです。
 現在、たまぁ〜に復刻版「スピン」がさまざまなフレーバーで限定発売されたりしていますが、ぜひぜひ「いちご味」も実験的に制作していただきたい。偏見抜きの舌で、もう一度味わってみたいと思います。

(2010.4.3)




数年前に発売された復刻版。しかも、当時は存在しなかった「スパイスソーセージ味」ってのが残念。当時の味はまったく復刻されていないけど、もうレシピが消失しちゃってるのかなぁ?


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