雪男やネッシーなど、海外のUMAに対抗できる純国産UMAの代表格といえば、もちろんツチノコ。
なんか、ビジュアル的にトンデモ度が低いっていうか、「こんな感じの生物なら本当にいるんじゃね?」と思わせる造形のリアリティがブームの過熱に貢献したような気がします。
もともとは江戸時代以前から語り継がれている「幻の生物」らしいんですが、大ブームのきっかけをつくったとされるのは、『釣りキチ三平』でおなじみ、矢口高雄先生が1973年に『少年マガジン』に発表したマンガ『幻の怪蛇バチヘビ』。
この作品、記憶にはあるんですが、『釣りキチ三平』のエピソードのひとつだった……とずーっと勘違いしていました。独立した作品だったんですね。矢口先生と少年が「ツチノコ発見の探検」に出る、というスタイルのフェイクドキュメンタリー的な内容でした。
矢口作品でブームに火がついて、それ以降、ツチノコは各種児童雑誌やテレビ特番を席巻。余波でUMA関連全体が盛り上がりましたよね。
僕的に印象的だったのは、やっぱり『ドラえもん』のツチノコネタかなぁ。コミックス9巻に掲載されていた「ツチノコ見つけた」というヤツ。現在は幻とされるツチノコも、いずれキチンと発見・捕獲され、養殖までされるようになる。21世紀(現行の設定では22世紀)の世界では、みんながペットとして飼っているのでめずらしくもなんともない……という話を「ドラえもん」に聞かされた「のび太」が、タイムマシンで未来世界へツチノコを入手しにいくっていう話。これが掲載されたのが1975年。この時期がまさにブームのまっただなかだったんでしょう。
当時からちょっと不思議だったのは、あれだけ子ども文化を席巻したツチノコなのに、なぜかグッズがあまりに少なかったってこと。今考えても、いまいち腑に落ちない。
だって当時は、著作権があるものでさえ、ちょっとブームになれば即座にパチモンの駄玩具やガチャガチャ類が巷にあふれる恐ろしい時代。にもかかわらず、ツチノコ関連のオモチャってあんまり記憶にない。著作権完全フリーなのに、ですよ。
同じく版権のない口裂け女がブームになったときは、ガチャガチャはすかさずネタにしてました。ビニール製の「耳まで裂けた唇」などの変装セットなんかがメチャ流行りましたよね。
それにあの時代、ゴムの爬虫類なんかは駄玩具の定番で、スピルバーグの『ジョーズ』が公開されたときも、ギラーミンの『キングコング』が公開されたときも、ゴム製サメ、ゴム製ゴリラが駄菓子屋の人気商品になりました(ま、クジの「あたり」として客寄せに使われたわけですが)。なのに、ゴム製ツチノコの記憶ってない。これは絶対にあってしかるべきだった、と思うんですけど……。
唯一、記憶に残っていて、なおかつ幼少時のお気に入りだったのが、ソフビ製のリアルなツチノコフィギュアでした。ちゃんと市販されていたわけじゃなくて、縁日の「宝釣り」でゲットしたモノ。
「宝釣り」ってのは、無数のロープの先におもちゃをぶらさげたクジ。ロープの束から一本を選んでひっぱると、その先に結びつけたおもちゃがズルズルと釣れる。釣れたおもちゃを賞品としてもらえるシステムでした。
最初からツチノコ狙いでチャレンジした僕は、見事一発でゲット。飛び跳ねて喜んだことを覚えています。このソフビフィギュア、やたらとデキがよくて、リアルな造形・彩色がステキだっただけでなく、口のなかにゴム製の赤い舌が仕込まれている。お腹を押すと、このゴムの舌に空気が満たされて、ピュッと飛び出るんです。男の子心をくすぐる素晴らしいギミックでした。
クジの景品なんかじゃなく、普通に売ったら絶対にヒットしていたと思うんだけど……。結局、最後まで市販はされず、だからこのオモチャも激マイナー玩具のまま終了。誰かと「あったよねー」という話で盛り上がりたいんですけど、誰に聞いても「えー、そんなの知らない!」って言われちゃうんですよね。
(2009.12.15)
バチヘビ 幻の怪蛇
ドラえもん(2) 「ツチノコ見つけた」収録
ツチノコの正体
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