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ラッセルヨーヨー

「結局、出会えなかった“赤ブレザーの外人”」





 同世代なら誰だって覚えていますよね、「ラッセルヨーヨー」の大ブーム。
 「コカ・コーラ」や「ファンタ」「スプライト」「Hi-C」など、コカ・コーラブランドの商品ロゴが入ったスタイリッシュなヨーヨーです。登場したのは 1976年。1979年にも「かえってきたラッセルヨーヨー」のキャッチコピーで再登場しました。販促品的なオマケではなく、れっきとした単体商品。が、 売っているのはオモチャ屋さんではなく、コカ・コーラ社の飲料を扱っているお菓子屋さん。今考えると、かなり変則的な商品だったんですね。


かなり忠実に再現された第1世代「ラッセルヨーヨー」復刻版。裏面のレトロなカタカナロゴがステキ。左から「ビギナー」「プロフェッショナル、そしてクリスタル仕様の「スーパー」

 僕がドップリとハマったのは第1次ブームだったんですが、もう、ほんっとにスゴかっ た。半ズボンのお尻ポケットに「ラッセルヨーヨー」。これが1976年の小学生男子のお決まりスタイル。もちろん学校でも休み時間は「ヨーヨータイム」で した。当時、ヨーヨーはすでに古臭い玩具というイメージでしたが、これを見事に現役のオモチャに、っていうか、クールなファッションアイテム的な地位に復 権させました。

 これほどまでに子ど もたちを魅了したのは、まずそのデザイン。「コーラ」や「スプライト」などはロゴデザインもカッコイイし(「HI-C」ヨーヨーは人気なかったなぁ)、特 に「スーパー」(初代「ラッセルヨーヨー」は「ビギナー」「プロフェッショナル」「スーパー」と3種のランクがありました)はヨーヨーの外周がクリスタ ルっぽい透明プラスチックで縁どられていて、なんかこう、「最高級モデル」としてのステータスを感じさせてくれたんです。

 そ してもちろん、機能面も新しかった。ヒモがヨーヨーの軸に固定されておらず、スピン(空回り)する構造になっている。たったこれだけの工夫が、従来のただ 上下するだけのヨーヨーとはまったく違う遊びの幅を生みだしました。スピン初体験時のあの新鮮な手応え、今も覚えています。ヨーヨーをシュパッと下に投げ おろすと、地面すれすれに停止したままギュルギュルと回転する。心地よい振動と、ちょっと重たくなったような抵抗感が手に伝わって、未体験の快感でした。
 そ して最大の魅力は、なんといっても多種多様な「ワザ」。添付の小さなマニュアルには、簡単なものから「できねーよ、そんなの」な大技まで、各種テクニック が掲載されていました。手首を返し、スナップを利かせてシュパッ!と投げおろす基本中の基本がマスターできると、「犬の散歩」(右図参照)や「半回転」 (アンダーハンドスローで斜め下にヨーヨーを投げる。投げたヨーヨーが空中で半円を描いたところでキャッチ)、ちょっと練習すれば「1回転」(「反回転」 のヨーヨーをやりすごす。背後に回ったヨーヨーが完全に円を描いて戻ってきたところでキャッチ。最初の難関!)くらいまでは一気にできるようになって、 「よしっ!」なーんて感じで上達の実感が味わえました。
 ちなみに僕はそこどまり。「大車輪」(「1回転」の連続技)などは何度やってもできませんでした(この「大車輪」、たぶん当時の子どもなら誰でも挑戦したメジャーなワザだったはずですが、オフィシャルなマニュアルには掲載されていないんですね。危険だから?)。


 も うひとつの特徴として、「君たちの街にもヨーヨーチャンピオンがやって来る!」的なキャンペーンがありました。町のお菓子屋さんなどに赤いブレザーを着た 怪しい外人(ラッセル社のデモンストレーターだったらしい)が派遣され、近所の子どもたちを集めてコンテストをするんです。僕の街にもちょくちょく来てい たようで、友人たちは何度もコンテストに参加していました。でもこの大会、ちゃんと告知されて開催されるわけじゃなくて、「たまたま居合わせた子だけが参 加できる」みたいな不思議なシステムだったようで、運の悪い僕は一度もでくわすことができませんでした。
 大会翌日、クラスメートが「すごかったよなぁ、あの外人!」なんて話しているのを聞いて、すっごくうらやましかった。また、「コンテストの優勝者は、 『バタフライヨーヨー』っていう見たこともないモデルをもらってたぜ!」という発言も聞き捨てなりません。なんでも「チョウチョのような形のヨーヨー」ら しいのですが、「ラッセルヨーヨー」の広告などにも、それについての情報はいっさいなく、本当に「幻」のような存在でした。


 実 のところ、僕は「ホントは『バタフライヨーヨー』なんて存在しないんじゃないの? アイツら、デタラメ言ってたんじゃないの?」なんて、つい最近まで思っ ていたんです。数年前の「復刻版ラッセルヨーヨー」キャンペーンで、なんと「バタフライヨーヨー」がちゃーんと復刻されているのを目にして、30年以上の 時を経て「あ、ホントだったんだ」と納得しました。ムトウくん、ウソつき呼ばわりしてゴメンナサイ。

 と ころで、その「復刻版ラッセルヨーヨー」、もちろん購入しちゃいましたが、えーっ? こんなに軽かったっけ? 当時より安っぽい素材でつくったんじゃない の? という印象。だって、もっとズッシリ重たくなかったっけ? 高級感がヒシヒシと伝わるツクリじゃなかったっけ?……と、しばし首をかしげたんだけ ど、やっぱり、これってこっちが大人になっちゃったせいだろうな。

(2009.11.20)



「当時、誰もが挑戦した3大テクニック」

これぞ「ラッセルヨーヨー」の醍醐味! このままヨーヨーを引き上げ、スカートやズボンにからみつかせる「犬にかまれた」というワザもありました。

これができると教室のヒーローに。僕は何度練習してもダメでした。なぜか回転の途中で糸が伸びきっちゃうんですよねぇ……

「犬の散歩」の応用ワザ。かなり難しいわりにはダイナミズムに欠ける。成功しても、周囲からの反応は「ふ〜ん」「へぇ〜」という感じでした。


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