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昭和の消しゴムあれこれ

 「消えない消 しゴムたちの消せない思い出」



*関連トピック:スーパーカー消しゴム





 僕らが育った70年代は、文房具・学用品の「おも ちゃ化」が急速に促進された時代でした。多くの文具が「学校へ持ち込んでもOKな玩具」と化し、「文房具である」ということはもはや先生に没収されないた めのアリバイにすぎない(ま、それでも没収されちゃうわけですが)……みたいなモノがドシドシと子ども文化のなかに流入しはじめたんです。

 特に消しゴムはその傾向が強くて、無数のゴム製玩具が(字を消すことなんてまったくできないにもかかわらず)「○○消しゴム」という名義で、文具店で売 られたり、次から次へとガチャガチャのネタになっていきました。

  こういう「おもしろ消しゴム」の歴史の源流がどこにあるのかはわかりませんが、ひとつ、確実に大きな影響を与えたと思われるのが、1972年に登場した 「ユニ坊主」。三菱「uni」を1ダース買うともらえたオマケの消しゴムです。単なる穴のあいた球体消しゴムなんですが、謎めいたCMの効果もあって、当 時、大人までが「ユニ坊主」ほしさに「uni」を買いもとめるほどの一大ブームになりました。


  以前、三菱の広報さんに取材したことがあるのですが、当時、この「ユニ坊主」人気にまっさきに便乗したのがガチャガチャ業界だったそうです。大小さまざま のニセ「ユニ坊主」がつくられ、全国のガチャガチャに詰め込まれました。ニセといっても、現在では考えられないことですが、堂々と「ユニ坊主」として販売 しちゃうんです。今のパクリ商品なら「ユミ坊主」とか「コニ坊主」とか、姑息に逃げを打つでしょうが(こういうことすら最近ではほとんど見られなくなって きましたけど)、当時のアナーキーなガチャガチャ業界では「パクリは堂々と!」が常識だったようで、なんと三菱の「ユニ坊主」プレゼント告知ポスターがそ のままカラーコピーされ、ガチャの台紙に使用されたこともあったのだとか。いやぁ、本当にイイ時代……あ、いや、とんでもない暗黒時代だったわけですね。

  ニセ「ユニ坊主」以降、「おもしろ消しゴム」はガチャのネタとして定番化しました。一方で、文具店で販売される消しゴムも、女子を中心とした「香りつき」 消しゴムブームを皮切りにして、急速に「おもしろ化」「ファンシー化」されていきました(こちらはさすがに「まったく字が消えない」という商品はありませ んでしたが)。こうして、小学生時代の僕らは、男子も女子も、筆箱の中に数個の「おもちゃ」をしのばせるようになったのです。

 というわけで、この時代、70年代から80年代の前半くらいまでの昭和な「おもしろ消しゴム」を以下にご紹介します。

(2011.5.15)

怪獣消しゴム
僕 ら世代が最初に出会った「フィギュア系」消しゴムが、おそらく怪獣消しゴムだったと思います。主流は円谷でしたが、「ミラーマン」のラインナップなんかも あったな。平行して、西城秀樹や郷ひろみなどの芸能人消しゴム、力士や野球選手、プロレスラーの消しゴムが流行りました。この傾向は80年のキン消しまで 続くわけですね


スーパー カー消しゴム

ガチャ 消し市場、最大のブーム勃発。くわしくは「スーパーカー消しゴム」を ご覧ください


ねり消し

70 年代の第1次ブームは、多くの学校で「ねり消し禁止令」が施行されたために収束しましたが、80年代以降も周期的に流行しているようです。世代を問わず、 誰もが一度はねりねりしているわけですね。この商品はフレール(エコーマインドという会社のブランド)製。おそらく80年代前半のモノ

お菓子消 しゴム

いまだ に売られていますよね、こういうリアルなお菓子型。この商品は、たぶん老舗ヒノデワシ製。ガチャネタではなく、文具屋さんで売られていたものだと思いま す。今はゴム臭いだけですが、当時はチョコやバニラなどの香りがつけられてたはず


ぺったん こ消しゴム

80 年代初頭、なぜかこういうすっぺらな消しゴムが量産されました。シート状の消しゴムに、いかにも80年代的なファンシーなタッチで「なにかっぽい」キャラ が描かれている、というのが共通構造。当時「缶ペンケース」が流行ったので、そこにすっきり収まるってことで普及したのかな?

タイヤ消 しゴム

これは 文具屋さんで売っていた光景をアリアリと覚えてるなぁ。手元にはなぜか青しかないけど、やっぱり黒が一番人気でした。ホイール部分のプラ製パーツが否応な く「おもっちゃっぽさ」を高めてます


ペンギン 消しゴム

なんで これが我が家にあるのか、まったく覚えていません。けっこうデカイので、ガチャではなさそうだなぁ。ツヤツヤの真っ黒で、しかも無駄にリアル。なんだか怖 いです。なにかのノベルティ?

きゅうり 消しゴム

経 年劣化がはげしいですが、おそらくガチャのネタだったと思います。たぶん「野菜消しゴム」としていろいろなラインナップがあったのでしょう。三菱 「uni」が73年に「やさいえんぴつ」をおまけにつけて、これがけっこうヒットしているので、そこに便乗した商品かもしれません


70年代のキ ティちゃん消しゴムを再現


リング型 消しゴム

僕 が個人的に本当に懐かしいのは、怪獣でも、スーパーカーでもなく、こういう単なるシマシマのリングとか、以下で紹介している花型、ハート型とかなんですよ ね。小1のころ、消しゴムが完全に「おもちゃ化」される直前に、ボチボチと教室で流行りはじめた元祖「おもしろ消しゴム」の数々……。主に女子たちの間に ひろまって、「わー、そんなのあるんだぁ」なんて思いながら眺めてました。こういうカラフルなリング型って、鉛筆の頭のところにはめてる子が多かった。重 くて使いにくくなるんですけど

お花型消 しゴム

やっ ぱり懐かしいなぁ……。凝った造形(といっても、今と比べればユルユルなんですけど)の「フィギュア系」消しゴム以前、ガチャガチャの消しゴムは本当にシ ンプルなモノが主流。それでも先生から目をつけられて、「そんなフザケたものを学校に持ってきてはいけません」なんて言われたものです。通学路の文房具屋 さんのガチャなどには必ず入ってましたね。カラフルでかわいいデザインだけでなく、フルーツっぽい香りも大きな魅力でした。ま、とっくに香りはぬけちゃっ て、ゴムの匂いしかしませんが


ハート型 消しゴム

こ れもいいなぁ。リング、お花、そしてハート。このへんの「消しゴムがちょっとおかしくなりはじめた」っていうころのモノが一番好き。「ハートにしたら子ど もがよろこぶんじゃない?」みたいな単純な大人の「子どもだまし」感がすごく平和でカワイイです。実際、僕らはよろこんだわけだし。ガチャ消しはスーパー カー以降のモノがインパクト強すぎて、こういう素朴なヤツはどんどん記憶から消えちゃうんですよね

円柱型消 しゴム

い くらなんでもシンプルすぎる円柱型。でも、「消しゴムが四角じゃない!」ってだけで珍しがられた時代もあったんですよね。円柱型は無数にあるので特定でき ませんが、これ、たぶんコスモスのガチャネタだったような気がする。メロン消しゴムってヤツで、メロンのイラストが描かれた紙ケースがついてたんじゃない かな?

おもしろ 消しゴム

こ れ、謎なんですよねぇ。どこでどうやって手に入れたんだろ? しかも、なんで開封もしてないんだろ? なんとなくですが、縁日や駄菓子屋くじの賞品だった ような気もします。造形もすこぶるいい加減で、花型消しゴムに顔のように見える3つの穴をあけただけ(笑)。いろんな種類をアソートしてくれればいいの に、同じヤツばっかりこんなにいりません


グローブ 型消しゴム

入手経 路不明。ガチャではなく、なにかのノベルティか、文具店で市販されていたもののようです。野球のボールやバット、サッカーやアメフトのボールなど、スポー ツグッズ型の消しゴムは定番でしたね。現在もイワコーさんがほぼ同じようなグローブ型消しゴムを販売しています


木馬型消 しゴム

あまり にズングリした造形の木馬型。授業中にユラユラさせて遊ぶこともできます。懐かしいのは、この半透明の緑色。このカラーの消しゴム、70年代後半ごろにや たらと流行しましたね

キャップ 付きヨット消しゴム

こ れもイイですねぇ。いわゆる金太郎アメ方式のイラストがついているタイプですが、鉛筆キャップがつきのちょっと珍しい一品。しかし、これ鉛筆につけたらか なりジャマですね。推測でしかないですが、70年代の余剰在庫を加工してつくった80年代の商品って感じがします(笑)

ブック消しゴム
こちらもたぶんガチャネタ。82年、やはり三菱「uni」が「辞書消しゴム」なるものをオマケにつ け、案の定、これもパクられまくりました。その当時の代表的なパチもの。おそらく、紙ケース(なにかの本の表紙のデザイン)つきで売られていたはずです


カー消しDVDに2000円出す?



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