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ロッテ「イヴ」
「男子禁制の香水ガム」


1972年発売、オリジナル「イヴ」。高貴!
*関連トピック:復刻版「コーヒーガム」 復刻版「クイッククエンチ」




 同世代の友人と「懐かしガム」の話になると、必ず登場するのが1972年に発売されたロッテの「イヴ」です (1995年まで販売)。
 多くの人の記憶に極めて鮮烈に刻みつけられているのは、これが当時としては類例のない「異端的商品」だったからでしょう。キャッチコピーは「魅惑の香水 ガム」。吐息にキンモクセイの香りを付加するというコンセプトで、女性限定的なゴージャスかつエレガントなパッケージで発売されました。パッケージは何度 か変更されたようですが、発売時は縦置き型の金色の箱で、外観はまるで化粧品のよう。価格も高くて、オスのガキにはちょっと手に取りずらい商品でした。味 わいも、というか、商品の最大の特徴である香りも、従来のどんな食品とも異質。まさに香水。というより、「なんだこれ、トイレの芳香剤か?」というミもフ タもない感想をもらすガキまで続出するほど。 こうした唯一無二の商品特性と、それから、なんとなく「本当は男の子が触れちゃいけない感じ」みたいな、あ る種の背徳感とともに、「イヴ」は僕たちの幼児期の記憶に生々しく記録されています。そういえば、「イブ」の話で盛り上がるのは、女性より、圧倒的に男の 方が多いような気がする。



 で、その「イヴ」が現在、サークルKサンクス限定商品として、また数量も限定の商品として、ロッテから復刻されています。現代の風潮に合わせてシュガー レス化した、というのはともかくとして、また、印象的な箱型ケースじゃなくて通常の包装になったことにも目をつぶるとして、「現代の嗜好性」に合わせて 「粒ガム」にしちゃった……というのは、かなりザンネンな感じがします。
 お味、というか香りの方も、つつましく控えめ。かつての「トイレの芳香剤かよっ!」的なインパクトはまったくなくなってしまいました。う〜ん……。 まぁ、違和感のない「無難」な商品としてアップデートするという発想はわかりますけど、「イヴ」ってそもそも「無難」じゃないからこそ記憶に残る商品だっ たわけで、香りをウリにするガムが多数売られる現在、このレベルだと埋もれちゃう気がするんですよね。



 記憶が曖昧なんですが、「イヴ」は外ケースから出した板ガムの「サヤ」のデザインが、なにやら異様なほどに凝っていたという印象があります。これ、姉妹 品の「ローラ」(やはり香水ガムですが、こちらは「バラの香り」をウリにしていました)だったかも知れないんですけど、確か中央にアルフォンス・ミュシャ が描いたような女性のイラストがあって、色とりどりの無数の花が彼女を取り囲んでいる、という構図だったような。その細かい描画に子どもながらに「すごい なぁ!」と感心した覚えがあります。



 商品コンセプト、パケデザイン、香り、味、そのすべてから僕らは「イヴ」に「禁断の異世界」を感じていたわけです。こういう衝撃、やっぱり復刻盤にもほ しかったですよね。ロッテは今後も復刻ガムの企画を用意しているようで、次回に期待することにしましょう。できれば「クイッククエンチ」を昔同様、ガム、 ドリンク、アイスの3種セットで蘇らせてください!

(2010.10.27)


復刻版「イヴ」のパッケージ。かつてのパケを横置きにしたようなデザイン



粒ガム化されちゃいました。薔薇色のカラーでかろうじて「イヴ」らしさを演出?



あのちょっと怖い「イヴ」ちゃん(?)マークは健在




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